商標権の更新


「商標登録とは」で説明したように、登録料を納付して、登録を受けた後、その商標権はいつまで有効に存続するのでしょうか。
商標権の存続期間は、登録の日から10年で終了します。そして、この存続期間は、商標権者が更新登録を申請し、更新の登録料を納付することにより、さらに10年存続させることができます。
この更新登録を繰り返すことにより、必要であれば、半ば永久的に存続させることができます。
私的な商標権というものを半ば永久的に保護するのは、公的な制度として何か奇異な感じを持たれるかもしれません。しかし、商標に化体した信用を保護することが商標制度の目的ですので、長年にわたる商標の使用の結果蓄積された信用を保護することは目的にかなうことであり、さらに商標権者による信用を維持しようとする努力が継続される限り、保護も存続されるべきと考えられます。

他方、半ば永久的に存続させる商標制度では、使用されていない商標や信用も化体していない商標が大量に長期間保護されてしまうことは、使用できる商標が限られるようになって、第三者に不利益を与えてしまう事態も考えられ、好ましいことではありません。このような事態には登録料の納付という無駄を商標権者に強いること、3年以上使用されていない商標は登録を取消すことを誰もが特許庁に請求できることで、平衡が図られようとしています。

では、更新登録の申請手続きを少し詳しく見ていきましょう。
手続きは、申請書を特許庁に提出し、更新の登録料を納付することで済みます。これを更新登録の申請といいます。申請書には、申請人(商標権者)の住所氏名、商標登録の登録番号を記載します。新規の商標登録出願と異なるのは、特許庁の審査はなく、申請だけで登録されることと、申請できる期間が現存する商標権の存続期間との関係で限定されていることです。
具体的には、現存する商標権の存続期間の満了前6ヶ月から満了の日までの間に、申請をしなければなりません。

では、この期日を忘れるなどして、この期間に申請をできなかった場合はどうなるのでしょう。
この場合でも、この期間経過後6か月以内であれば、申請することができます。ただし、この場合には通常の登録料に加えて、同じ額の割増登録料を納付しなければなりません。
これを追納といいます。そして、商標権は現存の商標権の存続期間の満了時点に遡って切れ目なく存続することになります。

さらに、上記の期間経過後6か月以内に申請できなかった場合はどうなるのでしょう。
この場合には、原則として、商標権は消滅します。消滅の時点は、現存の商標権の存続期間の満了時点に遡って消滅します。申請機会を逃して、商標権が消滅してしまったあとに、商標権を得ようとするのであれば、新規の商標登録をしなければなりません。
このように、更新登録の申請の期日を忘れたりすることは、手続き的にも、費用的にも損失が大きくなりますので、期日の注意や管理が望まれます。

また、登録料ですが、分割納付の制度について、見ておきましょう。通常の登録料は、10年の存続期間の全期間に対して納付するものですが、分割納付は、半分の期間5年に対して納付するものです。通常の10年分の登録料の二分の一より割高になりますが、ライフサイクルの短い商品のペットネームなどを商標登録する場合、5年経過後は、分割の残りの登録料を納付しないで消滅させることも、商標権者の選択でできる制度です。

納付すべき期限は、分割する前半は、設定登録の場合には登録すべき旨の査定の謄本送達から30日以内に、更新登録の場合には更新登録の申請と同時に納付しなければなりません。これは、分割しない場合と同じです。分割する残りの後半は、10年の存続期間の満了前5年までに納付しなければなりません。これは、設定登録の後半の場合も、更新登録の後半の場合も同じです。

また、この期日を忘れるなどして、この期間に申請をできなかった場合はどうなるのでしょう。分割しないときと同じで、この期間経過後6か月以内であれば、納付することができます。ただし、この場合には通常の登録料に加えて、同じ額の割増登録料を納付する必要があることも同じです。つまり、分割納付の場合にも追納できるのです。そして、商標権は10年の存続期間の半分時点に遡って切れ目なく存続することになります。

さらに、上記の期間経過後6か月以内に納付できなかった場合はどうなるのでしょう。
この場合には、原則として、商標権は消滅します。こうして、5年分の登録料で意図的に5年で消滅させることができるのです。
ちょっと、分割納付の期限はわかりにくいと思いますので、これらを下図で示します。
商標の存続期間については、このように細かな注意や管理が望まれます。

次に、更新登録の必要性、更新登録をしない場合のリスクなどを見ていきましょう。
あなたが更新登録をしない場合には、存続期間の満了後6ヶ月経過したときに、存続期間の満了時点に遡って消滅することは、満了期日を忘れて、追納の機会も逃して消滅することと同様です。
その商標について、あなたは商標権者ではなくなるので、他人がその商標を勝手に使用したとしても、その他人の行為は、侵害又は侵害とみなされる行為には該当しません。従って、その他人の行為をあなたは、差止めることはできません。また、その他人に損害賠償を請求することもできません。

差止めまでできなくてもよい、損害賠償までできなくてもよい、それまで使っていた商標が以降も使用できればいい、という考え方もあるかもしれません。しかし、他人がその商標を権利化、商標登録出願をしたとしたらどうでしょうか。その他人が、いままであなたが持っていた商標権と同じ登録を受けることができれば、あなたはその商標を使用すれば、その他人から差止めされますし、あなたの行為を中止するよう求める警告を無視すれば、その他人に損害を与えたとして損害を賠償する責務を負うことになります。
「商標の登録要件」でご理解いただいたように、あなたがいままで商標権を持っていたことに着目すれば、不登録事由10に該当しなければ、その他人は登録を受けることができるのです。言い換えれば、その商標をあなたがいままで使っていたことで、需要者の間に広く認識されている場合には、不登録事由10に該当し、その他人は登録を受けることができません。
しかし、需要者に広く認識される状態とは、必ずしも全国的に広く認識される必要はありませんが、最終消費者又は取引者の間で、少なくともある一地方で広く認識されていることを要し、特許庁がインターネットで提供している特許電子図書館中の「日本国周知・著名商標検索」で検索されるものか、事業者の生産実績、広告回数などに加えて、需要者に対するアンケート調査などで総合的に判断され証明されるものとされ、ハードルの高いものです。
需要者の間に広く認識されていると、言えるかどうかに、全ての趨勢がかかるわけで、非常にリスクが高いことになります。せっかく商標登録を受けることができて、10年にわたりあなたの信用が蓄積されて来たものを、需要者の間に広く認識されたと、認められないだけで全てを失うことになるわけです。
以上により、現在の存続期間の満了後も、あなたの商標を有効に使い続けようとする場合には、存続期間の満了の前に更新登録の手続きをすることが望ましいことをご理解いただきたいと思います。
更に詳しくは、ご遠慮なくお訪ねください。