商標の国際出願


日本の事業者は外国で自分の商標を使って商品や役務を提供すると同様に、外国の事業者も日本国で自分の商標を使って商品や役務を提供していることは日常目にするところです。
日本国内における商標の保護は、日本国の商標法という法律に基づき登録を受けることにより保護されることは、これまでの説明でご理解をいただけたと思います。
日本国の商標法による保護は、もちろん外国では効力はありませんが、こうした商標の登録による保護制度は、パリ条約(*注1)により、国際的にいわば標準化されており、パリ条約の加盟国であれば、同様の登録による保護制度により、大方の外国でもその国の法律により保護されています。
*注1:パリ条約とは、1883年にパリで締結された工業所有権の保護に関する条約で、その後改正が繰り返され、1967年にストックホルムで改正され、1979年に修正され最新となっています。日本は、1899年(明治32年)に加盟し、2008年現在の加盟国は171ケ国に及んでいます。

では日本の事業者である、あなたがその外国でのビジネスを拡大していこうとするときに、あなたの商標もその重要な武器とするために、外国で登録を受けるにはどう手続きしたらいいのでしょうか。
この手続きには、二通りあります。

一つ目は、外国ごとにそれぞれの国の法律に基づいた手続きを経て、それぞれの国の法律に基づいた保護を受ける方法です。その国がパリ条約加盟国であれば、ほぼ日本国と同様な手続きにより、同様な保護を受けることができます。

二つ目は、マドリッド協定議定書(*注2)に基づく方法です。マドリッド協定議定書の加盟国であれば、外国ごとに行わなければならない商標の登録出願手続を、1通の出願書類を日本の特許庁に提出することにより複数の外国に一括して登録出願することができる手続方法で、受けることができる保護はほぼ日本国と同様です。
*注2:マドリッド協定議定書とは、標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書として1989年に採択され、1996年から運用が始まったものです。日本は、1999年に加盟し、2000年からその効力を生じ、運用が始まっています。2009年現在79ケ国が加盟しています。

この二通りの手続きは、概略の流れを図示すると次ページの図ように比較できます。
複数の外国に出願するのであれば、その外国がマドリッド協定議定書の加盟国であれば、二つ目のマドリッド協定議定書に基づく手続きのほうが、国ごとの書類、国ごとの言語、国ごとの代理人が不要となり、出願人の労力や負担は少なく、明らかに有利です。ここでは、マドリッド協定議定書に基づく手続きについて、もう少し詳しく見ることにしましょう。

(1)基礎出願又は基礎登録
日本国の出願人は、日本特許庁に商標登録出願をしているか、又は商標の登録を受けていることが必要です。これらを基礎として、国際登録出願をするからです。

(2)本国官庁への出願
英語で作成した出願書類に保護を受けたいマドリッド協定議定書の加盟国を指定して、手数料納付とともに、日本特許庁に提出します。日本国の出願人の場合、本国は日本で、官庁が特許庁で、使用を定めた言語が英語であるためです。

(3)国際登録日
出願書類に形式的問題がなければ、通常そのまま日本特許庁から国際事務局に送付され、国際事務局で受理され、国際事務局が管理する国際登録簿に登録され、国際事務局により国際公表されます。この場合、日本特許庁への提出日が国際登録日となります。

(4)指定国官庁による審査
国際事務局から各指定国に出願が通報され、通報から12ヶ月、国によっては18ケ月以内で各指定国官庁は各国の法律に照らしてその出願された商標が保護することができるか、審査します。この期間に拒絶の通報(日本の拒絶理由通知に相当)がなければ、その指定国の保護を受けることができると考えられます。
逆に、ある指定国から拒絶の通報を受けた場合には、その指定国と個別に意見書・補正書などで保護を受けるための手続きが生じます。この部分は、一つ目の外国ごとの手続きと同様になります。

(5)セントラルアタック
基礎出願又は基礎登録が、国際登録日から5年以内で、拒絶、放棄、無効などになった場合には、国際登録が取消され、結果として指定国における保護も失うことになり、これをセントラルアタックといいます。この場合には、一括してできるメリットがなくなり、一つ目の外国ごとの手続きと同様になりますが、一定の手続きをすることで、国際登録日に出願したとみなされ、その日に国際登録出願をしたという権利は維持されます。
詳しくは、ご遠慮なくお尋ねください。